社会インフラにイノベーションを ―― 安心・安全な暮らしを目指して ――
近年多発する自然災害や、急激な人口減少・少子高齢化などの社会構造の変化、さらには新型コロナウイルス感染症の世界的拡大など、現代における社会課題は年々複雑化・多様化し、その早急な解決が望まれている。第1回は、明電舎が事業を通してどのように社会課題と向き合い、私たちの安心・安全な暮らしを支えているのかを、社会インフラ事業を率いるリーダーたちへのインタビューから紐解く。
ここに掲載のコンテンツは、日経ビジネス電子版Specialで2020年11月~2021年3月まで掲載した広告特集「電気よ、動詞になれ。より豊かな未来の実現に向けて」の転載です。
私たちが普段何気なく使っている電気、上下水道、鉄道、公共施設など、日々の生活に欠かせない社会インフラ。明電舎は1897年の創業以来、様々な製品・サービスの提供を通して社会インフラを支え、時代のニーズに合わせて多様なソリューションを実現してきた。
「これまでは、事業部ごとのアプローチで社会課題の解決に取り組んできましたが、これからはそうはいきません。複雑化する社会課題を打破するため、私たちにもまた、大きな変化が求められているのです」。そう語るのは、社会インフラ事業企画本部長の鈴木だ。続けて、そのポイントを「当社の持つ独自の技術・ノウハウと新たな領域の掛け合わせ」と表現する。「私たちが培ってきた独自の技術・ノウハウに、IoT・AI、5GといったDXにおける新しい技術や、組織・企業といった枠組みを超えたパートナーシップを掛け合わせることでイノベーションを起こし、新たなソリューションを生み出すのが狙いです」。
さらに、「従来得意としてきた顧客ニーズを確実に満たすものづくりをコアにして、当社がリーダーシップを取って革新的なソリューション提案をしていく」とし、明電舎のインフラ事業の新たなビジネスモデルへの転換を示唆する。
メンテナンスのスマート化で
社会インフラの崩壊を食い止めろ
現在の日本は急激な人口減少・少子高齢化に伴い、社会インフラが普及した時代から社会構造が大きく変化している。
「高度経済成長期に整備された日本の社会インフラの多くは老朽化が進んでおり、適切なメンテナンスや更新を施さなければ、早晩必要な機能を維持することができなくなる。一方で、急激な少子高齢化によりインフラ設備の維持管理を担う高度技術者は今後ますます不足していく」。電力・エネルギー事業部長の岡本は危機感を隠さない。現代の社会インフラは存続と崩壊の分水嶺にあるといえるのだ。
このような現状からインフラ設備の維持管理の効率化へのニーズが高まっており、明電舎はIoT技術を活用することで応えてきた。その一つが、電力回路のオン・オフを行う固体絶縁開閉装置(スマートSIS)だ。機器に取り付けたセンサーからデータを吸い上げ、リアルタイムで監視することで、従来定期的に必要だった現場での点検作業が削減でき、保守の省力化と適切な点検時期の判断が可能になった。岡本は、このソリューションを「長年、電力事業に携わり設備や使われる現場を熟知したインフラメーカーとしての素地があるからこそ」と説く。IoT技術と掛け合わせる膨大なノウハウを持つからこそ実現できたソリューションだ。
電鉄分野でも明電舎の製品がメンテナンス作業のスマート化に大きく貢献している。「架線検測装置カテナリーアイ」は、車両に電力を供給している架線設備の状態を、車両屋根上に設置されたカメラと画像処理技術によって把握するシステムだ。「従来のセンサーによる検測では、夜間の保守作業時間に現地へ向かい、異常値の箇所を目視で探して確認する必要がありました。カテナリーアイは画像をベースに検測しているので、診断で異常値が見つかった際でも、オフィスにいながらにして現地の状態を即、画像で確認することができます」。電鉄システム事業部長の今は、さらに先の未来を見据える。
「画像解析とAI機械学習を併用することで、現在の架線検測・診断に加え、現場での目視に頼ってきた架線設備を構成する金具類の状態確認や異常検知を自動化できるところまできています。5Gやクラウドをはじめ、画像データを便利に使える環境が急速に整う中で、カテナリーアイはさらに進化を続け、スマートメンテナンスにおける新しいソリューションを提供していきます」
高まるBCPの重要性
水位予測による防災、電源確保による減災
少子高齢化・人口減少などの社会構造の問題と共に、年々その脅威を増しているのが大規模な自然災害だ。日本はもともと自然災害が起きやすい国土であるが、昨今では大型台風の発生や局地的なゲリラ豪雨など、自然災害が頻発化・激甚化し、自治体や企業におけるBCP(事業継続計画)への関心が高まっている。
そんな中、明電舎は身近にあるインフラ設備を有効活用し、自治体の防災をサポートするこれまでにない新たな仕組みを生み出した。
「日本中に張り巡らされた下水管の総延長は約48万kmです。下水道は目には見えませんが、私たちの暮らしに最も身近なインフラであるといえます」。水インフラシステム事業部長の毛綿谷は、ゲリラ豪雨に対するソリューションについてこう切り出した。下水道は、家庭や工場からの排水を集めてきれいにするためのものだが、実は豪雨発生時にも重要な役割を果たしている。大雨が降っても街中に雨水が溢れないのは、下水道に雨水を集め河川や海に放流しているからだ。雨水が流れ込めば、当然、下水道管きょ内の水位は増す。明電舎はそこに目を付けた。
「都市型水害監視サービスではマンホールに実装したセンサーを介して、下水道管きょ内の水位の変化をリアルタイムで観測し、降雨情報や地理情報と照らし合わせることで、1時間先の高精度な水位を予測します」(毛綿谷)。この予測結果を自治体と共有することで、地域住民の安全確保に役立てようというのだ。すでに国内各地の自治体と共同して実証実験が始まっており、豪雨被害の抑制が期待される。
また、BCP対策として、災害時の安定した電源確保は早期復旧や減災のためにとても重要である。明電舎の移動電源車は発電機と燃料を積載しており、電気が必要な場所まで赴き、電力を供給することができる。従来、電線工事などを無停電で行うために電力会社が保有することがほとんどだったが、2011年の東日本大震災以降、自治体や民間企業の非常用電源としての活用も増えている。最近では2019年の台風15号、19号による水害で各地の鉄道が甚大な被害を受けたことにより、駅舎を含む鉄道設備の緊急用電源としての導入が検討されているという。移動電源車の導入により、駅設備を守ったり駅構内を避難所として活用できるようになることが期待される。
国内トップシェアを誇る明電舎の移動電源車が選ばれる理由を、発電事業部長の増子は「移動電源車の専門メーカーではないこと」と表現する。「例えば電力事業者や電鉄事業者以外にも、移動電源車を利用する顧客の事業形態やシチュエーションは多岐にわたります。私たちは電力、上下水道、電鉄、さらには産業分野などを含め、数多くのお客様とのお付き合いの中で様々な現場のニーズや運用ノウハウを蓄積してきました。移動電源車という製品を一つとっても、そうして得られたニーズやノウハウを展開し、それぞれのお客様や現場にとって最適な提案を行っています。最近ではタッチパネルによるガイド機能を付けることで、専門的な知識を持たない人でも緊急時に操作ができるような工夫も取り入れています」(増子)。
今後は、IoT技術を活用した複数の移動電源車の稼働状況の一括管理や、蓄電池との組み合わせで電力供給を効率化するなど、災害時のより効果的な運用を目指す。事業部間の連携によって製品の改善が進められることで、地域や企業のBCP対策に貢献する好例といってよい。
これまで見てきた取り組みは、とりわけ日本で顕著な社会課題を背景にした昨今のニーズに対するソリューションである。後編では、気候変動への対策や地域社会の自立に資する取り組みを紹介する。