せたな町洋上風力発電所において
風車ブレードの長寿命化に寄与する雷保護部品の実証試験を開始
株式会社明電舎(代表取締役 執行役員社長:井上晃夫/東京都品川区、以下明電舎)は、風車ブレードの雷保護部品であるレセプタ※1の実証を「せたな町洋上風力発電所(北海道せたな町)」で開始しました。この度開発したレセプタは、優れた導電性と機械強度により雷撃に伴う消耗を抑え、ブレード破損や稼働停止リスクを低減することで、発電事業者の発電量アップ、保守・メンテナンスコスト削減に寄与します。(特許第7355142号、特許7525008号)
チップレセプタ
ロッドレセプタ
※1 レセプタはブレード先端部に設置し、雷を誘引・受雷することで、ブレードや他設備を保護する製品。雷電流はブレードに内蔵されたダウンコンダクターでナセルとタワーを介し、地面に逃がす仕組み。
風力産業の課題
IEA(国際エネルギー機関)によると風力発電の発電量見通し(2020年実績比)は2050年に日本で約38倍、世界でも約15倍とされています。世界的に風力発電所の建設や風車の大型化が進む一方で、落雷によるブレードの破損は長期にわたる設備の稼働停止を招くため、陸上風力よりさらに保守・メンテナンスコストが高い洋上風力において、大きな課題とされています。
規格と発電事業者のリスク
IEC(国際電気標準会議)の定めるブレード雷保護規格における試験では、レセプタが取り付けられた設計で、雷1回あたりのエネルギー上限を600C(クーロン:電流×時間)としています。しかし、日本海沿岸などでは、冬季に600Cを超える雷が発生する事例も多く、600Cを超える雷破損については、発電事業者が高額な補修コストを負担するか、その対策のために高額な保険に加入する必要があります。
落雷後のレセプタとブレードの損傷例
明電舎レセプタの特徴
①落雷による損傷、消耗が少ない
レセプタ素材別溶損体積(600C×5回)
アルミニウム合金 銅 開発品
本レセプタは、素材に耐熱性の高い固溶体粒子と導電性の高い銅の複合合金を使用しています。銅などの金属は、雷が当たると、温度上昇に伴ってそのまま気化・消耗しますが、本レセプタは雷の熱が、固溶体粒子に逃げるため、気化による消耗を大幅に抑えることができます。また、落雷によって表面に大きな凹凸が生じないため、ブレード先端部の空気抵抗が高い高速環境下でも、エロージョンによる消耗や異音を低減します。
②複数の落雷にも耐えることが可能
落雷前後の組成図
落雷後、耐熱性の高い固溶体粒子がさらに微細化されて銅と均質な組織が形成されるため、複数の落雷にも耐えることが可能になります。
実証実験の概要
明電グループが運営する陸上の八竜風力発電所で2022年から先行実施した2年間の実証試験において、稼働上の問題がないことを確認したことから、この度、せたな町洋上風力発電所の1号基を対象に実証を開始しました。今後、八竜、せたな町の両サイトでレセプタの耐雷性を確認するとともに、雷エネルギー計測を実施します。既に八竜での実証機に複数回の落雷を確認しておりますが、異常なく発電所は運用されております。
今後の展望
明電グループはこれまでも千葉県、秋田県、石川県の3サイト・合計出力51,000kWの風力発電所を運営すると同時に、他社が保有する風力発電所の保守・メンテナンスサービスを手掛けることで、風力発電システムの知見を蓄積してまいりました。
洋上風力発電設備は構成機器、部品点数が多く、サプライチェーンも多岐にわたります。日本の風力関連産業界が目標とする2040年までの国内調達比率60%※2に貢献すべく、今後レセプタの実証試験を通じて、ブレード雷保護システムの国産化を目指すとともに、保守・メンテナンスサービスとのシナジー創出を検討してまいります。
※2 補足資料(経済産業省WEBサイトより)
洋上風力産業ビジョン(第一次)
浮体式洋上風力発電に関する国内外の動向等について
以 上
せたな町洋上風力発電所
所在地 :北海道せたな町
メーカ :Vestas
定格出力 :660kW×2基
運転開始時期 :2004年~
八竜風力発電所
所在地 :秋田県三種町
メーカ :Senvion
定格出力 :1500kW×17基
運転開始時期 :2006年~
所在地 :秋田県男鹿市
メーカ :Samsung Heavy Industries
定格出力 :2500kW×1基
運転開始時期 :2013年~
本件及び取材に関するお問い合わせ先
株式会社 明電舎
コーポレートコミュニケーション推進部 広報・IR課
電話 03-6420-8100