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
- 丸山
- 環境材料分析センターは、明電舎製品の品質や安全性を「材料面」から分析してチェックをするところです。明電舎の製品は、世界中で使われています。発電所や変電所、鉄道に上下水道、放送局などの社会インフラ施設から電気自動車のモータ・インバータなどの身近なものまで。これらの製品を、お客様に安心して使って頂けるように、ひいては製品を通してつながっている世界中のみんなが安心して生活できるように、わたしたちには「材料」の品質や安全性を分子レベルまで、きちんと分析する責任があるんです。
- 伊藤
- 明電舎の環境材料分析センターは、ISO17025の認定を受けています。ISO17025って馴染みがないですよね。簡単に言うと、「第三者機関によって国際的に試験能力を証明されたセンター」ということです。環境材料分析センターで発行する証明書は国際的に信頼され、通用する証明書なんです。ここで働くわたしたちは製品の信頼性・安全性を材料の分子レベルで証明する「分析のプロ集団」と言ったらちょっと言いすぎかな(笑)。では、これからセンターの中をご案内します。

- 伊藤
- ここは、材料分析室です。当社の製品に使われている材料に有害物質が含まれていないかを分析しています。わたしはその中で、RoHS(ローズ)指令を遵守しているかのチェックを行っています。具体的には、水銀・鉛・カドミウム・六価クロム、4つの対象物質のチェックを担当しています。わたしの分析でOKを出したのに、後で規制物質が入っているとわかったら大変です。プレッシャーはありますが、やりがいがあります。
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▲蛍光X線分析装置
- 伊藤
- 製品をパーツごと素材ごとに分解していきます。モノをつくる会社にいながら、分解することが仕事なんです。分解は、もうこれ以上素材として分けられないレベルまで行います。単純に言うと、例えば電線は周りを覆っている被覆と中の銅線に分けて違う材料として扱うということです。
分解したら、蛍光X線分析装置を使って対象の有害物質が含まれていないかを分析します。目では見えない成分まで厳しくチェックします。正しい分析を行うためには、サンプルの作り方が重要です。いろいろと試行錯誤をして、徹底的に繰り返し分析をするんです。 - 丸山
- そろそろ次の環境分析室に行きましょうか。
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▲誘導結合プラズマ発光分光分析装置
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▲原子吸光光度計
- 伊藤
- 例えば、当センターのある沼津事業所の工場排水の分析などをしています。いくら品質が高く安全な製品を提供できても、製造工程で万が一環境に負荷を与えてしまっては意味がありません。工場排水が法律で定められた基準をクリアしているか、分析装置(誘導結合プラズマ発光分光分析装置、原子吸光光度計など)を使ってチェックしています。これはメーカーとして最低限の責任だと思います。とくに沼津は、海もあって港も近い。この土地で明電舎がモノをつくらせていただいている分、わたしたちがきちんと地域のことを考える責任があると感じています。
- 丸山
- わたしも以前担当していました。環境規制は国際的にも日々厳しくなっていて、規制対象物質は拡大しています。常に規制動向をウォッチして、関連する有害物質については、先取りして社内で分析技術の検討をしていくことも重要なんですよ。
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▲丸山「部品を分解する方法もいろいろあり、分解するという作業だけで無限の可能性がある。」
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▲ガスクロマトグラフ質量分析装置
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▲ガスクロマトグラフ質量分析装置
- 丸山
- わたしは、この1年間、製品中の有害物質の有無を効率的に判定する方法を考える仕事をしていました。材料の分析はものによっては40時間もかかってしまうこともあります。どこにそんなに時間がかかるかというと、製品に使われている部品の分解と測定結果の解析です。伊藤さんのやっている蛍光X線分析装置を使った分析は、材料をそのまま分析できますが、調べたい有害物質以外も測定されて、正しい結果を解析して導き出すのに時間がかかってしまいます。
必要なものだけが測定できないか。もっと早く簡単に判断できる方法はないか。いろんな試行錯誤をした結果、分解方法を工夫して先に有害物質の有無をガスクロマトグラフ質量分析装置を使って調べ、有害物質が含まれている場合だけ規制値を超えていないか確認する方法を考えだしました。
部品を分解するということは、単純に解体していく方法だけでなく、切る、叩く、粉砕する、熱する、溶かすなどいろいろな方法があります。粉砕するという方法を一つとっても、凍らせてから粉々にする方法や、超音波装置を使う方法など、分解するという作業だけで無限の可能性があります。いつも成功するわけじゃない。失敗もたくさんあります。でもこの仕事はそういうことがおもしろくて好きなんです。
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▲塩水噴霧試験装置
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- 伊藤
- 試験室は、製品の耐久性や寿命を評価する場所です。さまざまな加速試験装置を使って試験します。加速試験装置といっても、ジェット機みたいなスピードがでるわけではありませんよ。例えば、海のそばで使われる電気設備は、海風の影響で錆びやすいです。どれくらい塩水に耐えられるのか、製品の使用年数によって想定される量の塩水を塩水噴霧試験装置で浴びせて短時間で評価試験します。
明電舎は、グローバルインフラメーカーです。その製品は世界中で使われています。海のそばもあれば、山の上も、砂漠や氷点下の世界で使われることもあります。そのような環境化でも、10年20年30年と使い続けられないといけない。わたしたちは、さまざまな環境を短時間で再現できる加速試験装置を使って、お客様の仕様や品質基準を満たしているか評価しているんです。

- 伊藤
- いまは材料を評価する仕事をしていますが、新しい材料を生み出す仕事もこの先やっていきたいです。たとえば、トンネルの壁にゴムのような柔らかい材料を混合する。もし事故が起こっても衝撃を吸収して被害を低減できないか。そんなことを考えたりします。材料って、世の中の暮らしを変えると思うんですよ。いつかそんな新しい材料を生み出して明電舎製品に適用していけるように、いまは明電舎製品に使われているさまざまな材料の勉強をしています。
- 丸山
- 実はわたし、ロボットアニメに出てくる巨大な宇宙ステーションに興味があるんです。宇宙にいけば、宇宙環境に適応した新しい材料が必要になる。新しい材料には、やっぱり新しい分析方法が必要になります。その分析方法を、わたしが開発したいです。そうしたら、世界のインフラメーカー明電舎も宇宙インフラ事業を担える企業になれるかもしれませんよね。