MEIDEN Engineer’s Note(明電 エンジニアズノート):No.16 鉄道を支える電気設備 車窓の風景は、電気で流れる。

鉄道を支える電気設備担当者 電鉄技術部 電鉄技術第二課 村松 勝(左) 電鉄技術部 電鉄技術第一課 衛藤 憲行(右)

ゴトン、と電車が動きだす。止まっていた風景が流れだすとき、電車には電気も流れています。私たち明電舎の仕事は、電車へ電気を供給すること。それも、安全に、安定的に。そのカギを握るのは何でしょうか?いま走っている新幹線、在来線をはじめ、これから開業予定の北陸新幹線や北海道新幹線にも採用されている設備とは?鉄道を支えるメイデンシャのヒミツに迫ります!

電車が走るとき、電気はどのように流れているんですか?

明電舎の電鉄用電気設備は全国の鉄道を支えています。 写真
▲明電舎の電鉄用電気設備は全国の鉄道を支えています。
衛藤
電車はパンタグラフを介して、トロリ線から電気を取り込み、モータを回して動きます。その電気は発電所から送電されてくるのですが、明電舎の多種多様な電気設備が納められた変電所を経て電車に供給されます。送電された電気は、そのままの電圧で電車に供給することはできません。そこで、変電所で電車用の電気に変圧して電車に供給しているんですよ。
村松
在来線では、66kV。新幹線では、275kVの超高圧の電気まで。当社はそのあらゆる電圧に幅広く対応する電気設備を提供しています。変電所には、路線毎にカスタマイズされた変圧器や開閉装置(遮断器)などがあり、制御装置によって無人で管理されています。その制御装置を通じて、中央指令所ですべての変電所を一括でコントロールする仕組みになっています。それが、中央監視制御システムです。
発電所から電車までの電気の流れ(新幹線の例)
▲発電所から電車までの電気の流れ(新幹線の例)

中央監視制御システムは、具体的にどんなことをするんですか?

村松「列車の正常運行のためには、このシステムによる安定した電力供給がかかせません。」 写真
▲村松「列車の正常運行のためには、このシステムによる安定した電力供給がかかせません。」
村松
電気をきちんと供給するために、変電所等が正常に働いているかどうかを把握し、コントロールするのが中央監視制御システムの役割です。例えば、当社のお納めしている千葉のシステムでは、変電所を含む50ヶ所以上の監視対象があります。始発から終電までの間、変電所等の電気設備は、それぞれの区間で必要な電気を送り続けています。その区間をすべてつないだ路線全体の電気設備を制御する役割を担うのが中央監視制御システム。列車の正常運行のためには、このシステムによる安定した電力供給がかかせません。

中央監視制御システムは、どの路線でも同じものを使っているんですか?

グッドデザイン賞を受賞した明電舎の中央指令システム 写真
▲グッドデザイン賞を受賞した明電舎の中央指令システム
村松
製品に求められる仕様は、お客様によってそれぞれ異なります。私の仕事は、お客様のニーズを的確にとらえて、プログラムにきちんと反映させること。システムを自動化したいお客様もいれば、そうでないお客様もいらっしゃいます。必ずしも最新のプログラムや通信方法が求められるとは限りません。鉄道は安全第一のインフラです。もっとも大事なのは、鉄道を利用するみなさんの安全とそれに応えようとする鉄道会社のニーズだと思います。

JR東日本に採用されている、最新のシステムでは、指令員のユーザビリティを特に重視した人間中心設計のシステムとインタフェース、操作卓、盤までを当社のデザイン課と共同で開発しました。お客様にも喜んでもらえてグッドデザイン賞までいただきました。
中央指令所~変電設備~電車 模式図
▲中央指令所~変電設備~電車 模式図

電鉄に特有の制御はありますか?

衛藤「鉄道は長期にわたって正常に機能する設備でなければならない。」 写真
▲衛藤「鉄道は長期にわたって正常に機能する設備でなければならない。」
村松
定時停送という、電鉄特有の制御があります。基本的には、終電が終わったときに電気を切り、始発の前に電気を送り始める。それを毎日繰り返しています。このとき、多くの機器を一括で制御しなければならないので、システムの負荷も高くなります。電鉄以外の一般の変電所、みなさんのおうちに電気を送るような変電所は、少し違います。おうちの電気は24時間つかえますよね。それは定時停送がない証拠です。
衛藤
仮に定時停送を毎日したとして、年間365回。10年で約3650回。電鉄用の開閉装置は、最低でもそれだけの回数、電気の入り切り(開閉)を繰り返さなければなりません。電鉄分野では、生涯約1万回の動作保証をしています。鉄道は、みなさんが毎日使うインフラですから、長期にわたって正常に機能する設備でなければならないと思っています。

開閉装置は、どんなエリアで使われていますか?

世界最高電圧クラスのタンク型真空遮断器(VCB) 写真
▲世界最高電圧クラスのタンク型真空遮断器(VCB)
衛藤
開閉装置を含め、さまざまな変電設備が全国的に採用されています。例えば、JRで言えば、JR東日本、東海、西日本、九州、四国、北海道などの在来線から、私鉄、地下鉄などにも採用頂いています。その他にも、東海道、山陽、東北、長野、九州の各新幹線や、2014年度開業予定の北陸新幹線、2015年度開業予定の北海道新幹線にも当社の設備が採用されています。北海道新幹線の変電設備には、真空インタラプタによるタンク型204kV真空遮断器(VCB)を世界で初めて納品しました。
村松
私たちは入社以来20年ほど、電鉄一筋に仕事をしてきましたが、明電舎としては1910年から、100年以上も電鉄用電気設備の生産供給に取り組んで来ました。20世紀、この国の交通インフラの要となった鉄道を陰で支えてきたという自負があります。

いろんな設備があって電車は走っているんですね。衛藤さんは、これらの設備の製造を担当しているのですか?

衛藤
一言でいえば、わたしは、主に新幹線の変電設備を中心に、お客様のニーズや設備の状況をくみとって、どんな電気設備がいいのかをコーディネートしているんです。電鉄の電気設備は、明電舎が積み重ねてきたさまざまな技術や経験を集めて、当社のほとんどの工場が連携してオール明電で作りあげています。
村松
今日ご紹介した中央指令システムや変圧器や開閉装置、制御装置以外にも、電車を走らせるために電力を安定的に供給するための設備を当社はいろいろとつくらせていただいています。電車は、人や物を運ぶだけじゃなくて、楽しい旅行の思い出になったり、遠く離れた恋人や家族を近づけたり、インターネットやスマホが当たり前になった今でも誰かのチカラになれると思います。わたしたち明電舎は、一丸となってこれからもそんな鉄道を支えていきたい。そう思っています。
回生電力貯蔵装置キャパポスト
▲回生電力貯蔵装置キャパポスト
整流器
▲整流器

この先、どんな仕事に突っ走りたいですか?

「電車の運行を支える電気設備の仕事に終わりはない。」 写真
▲「電車の運行を支える電気設備の仕事に終わりはない。」
村松
中央監視制御システム自体は、もともと電鉄だけでの技術ではありません。それこそ、電力網や上下水道の監視制御をしてきました。むしろそれを電鉄にカスタマイズしていったんです。その意味で、このシステムの根幹は普遍性のあるものですが、時代時代の技術を取り込んで進化していくものでもある。わたしは、システム自体を新しいものに変えたり、この技術で新しい分野を開拓したり、そういうチャレンジをしてみたいです。
衛藤
わたしは、九州新幹線、北陸新幹線、北海道新幹線のすべてに関わってきました。どの新幹線も、まだまだ先があります。九州なら長崎へ。北陸は長野から金沢、最後は大阪まで。北海道は、札幌へ。わたしの仕事もまだまだこれから。20世紀にみんなの夢とか希望とかを乗せて走っていた新幹線は、やっぱりこれからもそうでないと。そんな夢の乗り物を支えるわたしの仕事に終わりなんかありません。こんな楽しい仕事、終わってしまったら残念ですよ。

プロフィール 電鉄技術部 電鉄技術第二課 村松 勝(左) 好きな野菜:セロリ 電鉄技術部 電鉄技術第一課 衛藤 憲行(右) 好きな野菜:枝豆

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